さば 雲

友がひとりまた一人消えて思い出だけ残る。過ぎてしまえばこの世は残り少なく、今頃ひとりじたばたしている 。

野良猫

 黒い猫

 水彩 + 色鉛筆  157ⅹ226 ㎜


もはや
できあいの思想には寄りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には寄りかかりたくない
もはや
できあいの学問には寄りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも寄りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれくらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
寄りかかるとすればそれは
椅子の背もたれだけ 


■茨木のり子詩集.岩波文庫より
※詩「寄りかからず」