固定観念
蟹 Ⅲ(路上のカニ)
色鉛筆 21ⅹ 21.5 cm 2018年作(再掲載)
人生は固定観念を習う時間ではない。自分が生きていく時間であり、自分が生きていく場だ。頭と行動を既成のありふれた固定観念で染めてしまうと、自分はいなくなる。自分の中に古い他人がたくさん詰まっているだけだ。そんな人に個性などないのも当然だ。
定年を迎えた人が「第二の人生」と称して、俳句だの絵画だのエッセイだのを始める。彼らは誰もプロにはなれない。下手な俳句、下手な絵画、下手なエッセイ。なぜ自分が下手なのか理由さえ知らない。
その理由はシンプルだ。固定観念で物事に当たっているからプロになれないのだ。俳句とはこういうものだ、絵画とはこう描くものだ、という固定観念しか頭の中にないのだから仕方がない。
人が何かクリエイティブなことをして成功したいなら、必ず概念、固定観念、常識といったものを超越しなければならない。名人や芸術家というのはそれを果敢にやってきた人々のことなのだ。固定観念の再現とか人の真似事がクリエイティブであるわけがないのだ。
誰もの固定観念にある何か、ではなく、自分の中にある何かを表現することがクリエイティブというものだ。
そして、多くの人がつい忘れがちになっていることだが、この世を生きていくこともまたクリエイティブなことなのだ。
◆白取春彦著「人生がうまくいく哲学的思考術」より
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